「20代で得た知見」で、詩集とエッセイの合間から他者の人生と恋愛を垣間見る
こんにちは、ゆう(@yuhlabo)です。
先日「20代で得た知見」(F著)を読みました。シンプルな箔押しの装丁が目について思わず手に取りました。
他者と関わりながら不条理な現実をどうにかこうにか走り抜けるための考え方や、恋愛や結婚についての短い知見が詰まった1冊。詩集とエッセイの中間のような不思議な本です。
「人生は忘れがたい断片にいくつ出会い、心動かされたかで決まる」
作者の見聞きした言葉たちが、断片として結集した1冊
この本に書かれている内容は、全てが著者の考えではありません。他人から見聞きした話、他者の意見、それらが著者のフィルターを通して抽出され、編纂された1冊です。
冒頭に、次のような一節があります。
「二十代の内に知っておいた方が良いこととはなんですか」と私は数百名の方々に訊ねました。セレブに無名無職、社長、末期癌患者、善人悪人極悪人一切問わず訊ねた。
そんな私の断片と、彼らの断片を集めたもの。
それがいまあなたが手にしている本です。これがなにかのお役に立てば、光栄です。 なんのお役にも立てないなら、もっと光栄です。
小説ではない。エッセイとも言えないかもしれない。一文が長いわけでもなく、1ページはおろか数行で完結する節もある。すべてのエピソードが著者の体験による言葉でもない。だからこそ、書かれたひとつひとつのエピソードから、さまざまな人の背景が浮かび上がってくるようにさえ感じます。
文章は、自分自身の言葉で、自分自身の意見を書くべき。そんな固定観念があったので、読んでいて終始新鮮でした。
現代の恋愛観や結婚観について
また、この本では、恋愛や結婚、そして離婚について多く言及されています。
旧来の価値観にとらわれない結婚の話が書かれていて、20万部突破の形で多くの人の目に届いている。
昔からの結婚観に辟易としていた私にとっては、この書籍にはひとつの希望だと感じました。
さまざまな恋愛、家族、同棲、失恋、結婚、離婚。「惚れた腫れた」では到底収まらない具体的なエピソードは、ラベリングする単語で切り捨てられた端々にあったはずの個々の事例を垣間見られます。
話者の年代もバラバラで、携帯電話がなかった頃の銀座線での待ち合わせの話から、スクリーンショットを取られるから大事な話はLINEじゃなく口頭で伝えるエピソードまで。時代を数十年飛び越えてますね。
何より、「離婚は結婚より面白い」って書いてあるんですよ。いいじゃないですか。離婚は未経験ですけど。
箔押しオンリーの装丁が地味に気になる
この書籍で地味に気になっているのが「装丁」です。
白い厚手の紙をベースに黒い塗りつぶしの枠だけが印刷されていますが、タイトルと作者名、表紙のシンプルなイラスト、裏表紙の満月も全て金の箔押しです。なかなか贅沢で、手に取らないと分からない高級感です。Amazon商品ページの表紙プレビューでは分からない質感…………。
箔押しは縦×横の総面積で価格が決まると聞きます。そのため、10平方センチメートルでもそこそこの金額になるはず。ワンポイントならまだしも、全面に箔押しを使っているのは装丁としてはそこそこ贅沢な部類に入るでしょう。
私が購入した時点では売上20万部突破の帯がついていたので、元々売れると見越して採算の取れる贅沢な装丁にしてあるのかもしれません……。装丁を見るのは楽しいので好きです。
本はどこからめくって読んでもいい、と気づいた
自己啓発書やエッセイを読んでいる感覚はなく、どちらかと言えば「詩集」に近いです。詩集とエッセイの中間くらいかな。ふだん詩集はあまり読まないので新鮮でした。タイトルがそれっぽいので自己啓発書かな?と思っている人もけっこういそう。
1冊がひとつの物語ではないからこそ、どこから読んでもいい。まさしく詩集と同じですね。
編集の過程で意図的にエピソードを分類したり整列させているのは確かです。しかし、目についたページから適当に読んでよい。ミステリ小説のように、途中から雑にページをめくって読んだら楽しみが損なわれる……なんて悲しい出来事は起こりません。実際、最後の章に書かれた結婚式のスピーチから読んだし。
以前、知人が「手軽に文学に触れたいときに現代短歌集を読んでいる」と言っていたのを思い出しました。どのページをめくってどこから読んでもいい1冊。
本は何が書いてあっても本なのだな、とぼんやり考えました。今まで私は何を読んできたんだ……。
「20代で得た知見」(F著)の読書記録でした。普段なら手に取らなさそうな本を買ってみるのも良いものですね。充実した体験になりました。