リスク対策や改善に「気をつけます」はいらない
仕事で、情報セキュリティや監査にかかわっています。
その関係で、リスク対策・改善策・再発防止策などを目にする機会がよくあります。
そういったリスク対策の運用に携わって感じたことを、メモとして残しておきます。
人的要因の事故に「気をつけます」は役に立たない
口だけ対策へのジレンマ
リスク対策や改善策でよく聞く対応が以下。
- 個々人が気をつける
- 留意する(注意する)
- 社内に注意喚起する
これらはまったく意味がないなあ……と、常々感じています。
気をつけて事故が減るなら、世の中に事故はなくなっているはず。
身近な例なら、交通事故なども同様です。
気をつけます、教育します、個人で注意するよう呼びかけます。
どれもすべて、その場を切り抜けるためだけの、その場しのぎの対策です。
そんな内容を聞くたびに、内心「それは何もしないのと同じでは?」
とはいえ、自分の仕事でそういった「口だけ対策」をする場面も過去にありました。
もっといろいろできたらいいのになあ……と悔しい思いをした記憶が……。
すべての事故は人的要因
気をつけること自体が不要! と言いたいわけではありません。
当事者が注意するのももちろん大事。
会社で行われる従業員教育は、決して無意味ではないでしょう。
しかし、すべての事故は、最終的には人的要因によって起こります。
仕組みでどれだけ防いだとしても、悪意のある人がひとりいれば台なしです。
また、悪意がなくとも、ひとりの運用ミスから起こる大きな事故もざらにあります。
そのため、さまざまな仕組みを組み合わせて、事故が起こらないよう対策する必要があります。
「気をつけます」に留まらない改善を回すために
周知や教育だけでは事故はなくならない
周知や教育はとても大事ですが、それだけでは事故はなくなりません。
教育し続けて事故がなくなるなら苦労しません……。
ベネッセの情報流出事件なども起こらなかったでしょう。
「社内で注意喚起する」も、注意されたときは「ああ、気をつけよう」と意識を改めます。
しかし、実際に事故を起こすよタイミングで、教育の内容を思い出すことはまずありません。
100%ないと言ってもいいくらい。
教育だけでなく、仕組みも必要
そのため、教育とは別に、仕組みでの対策が必要です。
ヒヤリハットで済ます仕組み、ヒヤリハットすら起こさない仕組みが求められます。
ヒヤリハット
Wikipediaより
重大な災害や事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例の認知をいう。
文字通り、「突発的な事象やミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりするもの」である。
教育や啓蒙、注意喚起で対策しようとすると、ずっと教える側の労力がかかります。とても非効率。
ただ、個人的には、逆に仕組みだけでも不十分だと思います。
「なぜこんなルールが課されているのか?」が分からないと、納得感が得られず不満も生じます。
事故の防止には、仕組みと教育の両方が必要。
業務に携わるたびに、つよく感じています。
本質的な課題を見つけたい
「本当は何が課題なのか?」を突きつめないと、真のリスク対応や改善はできません。
表面上の対応、パフォーマンス(見せ物)としての対策。
そんなものに労力を割くくらいなら、真の課題に切り込んで根っこから改善するほうが断然よい。
しかし、課題への切込みは運用を変更せざるを得ないことも多くあります。
毎回この辺はジレンマを感じるところです……。
仕事を通じてずっと課題に感じており、「これだ!」という解決策も見えていません。
それでも、ひきつづき考え続けていきたい大きなテーマです。